第74回日本救急医学会関東地方会学術集会 第61回救急隊員学術研究会

会長挨拶

顔写真

第74回日本救急医学会関東地方会学術集会
第61回救急隊員学術研究会

会長 根本 学

(埼玉医科大学国際医療センター 救急医学科・救命救急科)

謹啓

この度、第74回日本救急医学会関東地方会学術集会・第61回救急隊員学術研究会の会長を拝命し、2024年2月17日(土曜日)に埼玉県さいたま市で開催する運びとなりました。

私自身、幼少期から剣道を学んできたことから、今回のテーマを『守・破・離』としました。もとは茶道家千利休の訓をまとめた『利休道歌』に記されている、「規矩作法 守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」を引用したものとされており、茶道や武道の修業の課程を示しています。今でこそ、標準化教育が広く普及し、情報技術(IT)の進歩等により、誰でも、いつでも、どこでも同じ教育を受けることが可能となりましたが、私が医師になった頃は、卒業してすぐに医局に入局し、医局の教えに習うことが主流でした。「習うより慣れろ。」とか、「学とはまねることだ。」とか言われ、先輩から厳しい指導を受けたことは忘れられません。診療録はもちろん手書きであり、胸部単純X線の描写や手術記録等、指導医によって特徴があったことから、診療録を見ただけで指導医が誰であるか判りました。それぞれに個性がある描写や手術記録ですが、よくよく見ると基本は同じであることに気付きました。また、手洗いや糸結び、持針器の持ち方から針の進め方まで、基本は同じですが術者によって微妙に異なり、場面場面で使い分けされていることも知りました。

『守』は、基本を忠実に守り、確実に身につける段階です。この基本をしっかりと身につけるのが研修医から専攻医の期間です。

『破』は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取入れ、心技を発展させる段階です。専攻医を修了し、サブ・スペシャリティーに進むことで様々な知識を得る期間です。

『離』は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階です。個々がしっかりとした目的と目標を持って様々な課題に取り組み、複数の診療科や医療職、他分野の専門家と協働して新しい治療法の確立や社会に必要な組織やシステムの構築に取り組むことが求められます。

新型コロナウイルス感染症では職種を超えて多くの専門家がそれぞれの知識や技術を共有し合い、国難に立ち向かうことができたのも、ある意味で『守・破・離』の教えがあったからだと思います。

宮本武蔵は、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。」と記しています。千日は約3年、万日は約30年ですから、専攻医としての3年間が鍛であり、その後、医師として練を重ね、社会貢献に身を捧げることと捉えれば、医師だけでなく、すべての医療職は鍛錬を怠ってはいけないことに気付きます。

本会は、新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類に移行されてからの開催になります。対面で多くの方々に参加していただき、熱心に学んでいただけるように、多少のご不便を掛けることになりますが会場を2つにして、ディスカッションや教育講演等は充分な場所を提供させていただきます。基本を学び、横の繋がりを大切にして、新たな領域に進むことに少しでも貢献できればと考えていますので、会員の皆様におかれましてはご協力のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

謹白



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救急隊員部会
開催地消防本部消防長 挨拶

埼玉西部消防局 消防局長 岸 文隆

謹啓

令和6年2月17日(土曜日)に日本救急医学会関東地方会との共催により第61回救急隊員学術研究会を開催させていただくに当たり、開催地消防本部として一言御挨拶を申し上げます。

日ごろ、救急隊員をはじめとする消防関係の皆様や医療関係の皆様におかれましては、日夜を問わず命を守るための職責を果たされていることに心より敬意を表します。

当消防局は、埼玉県の南西部に位置しており、所沢市、飯能市、狭山市、入間市及び日高市の5市を管轄しており、消防防災体制の充実強化、消防行政サービスの向上に職員一丸となって取り組んでいるところでございます。

今研究会は、本来であれば当局管内で開催すべきところではありますが、関東地区1都9県の消防関係の皆様や医療関係の皆様の交通の利便性を考慮し、さいたま市の「埼玉会館」をメイン会場として開催させていただくこととなりました。会場の設営等に当たり特段の御配慮をいただきました関係者の皆様には、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

さて、今研究会の会長であります根本先生は、「守・破・離」をテーマとして掲げられました。「守・破・離」は、基本を忠実に守りながら、良いものを取り入れ、独自に工夫し応用・発展させていくという教えとのことですが、現在、消防が直面している救急需要対策や医療安全対策などの多くの課題についても、こうした考えのもと、今研究会を通じて応用・発展させていくことができるのではないかと考えております。

結びに、今研究会が参加される皆様にとって御満足いただけますよう準備を進めてまいりますので、皆様の御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。

謹白



顔写真

看護部会 挨拶

看護部 吉野 暁子

(埼玉医科大学国際医療センター)

謹啓

この度、第74回日本救急医学会関東地方会学術集会・第61回救急隊員学術研究会の看護部会代表を拝命いたし、改めて身の引きしまる思いでございます。

私が救急看護に携わってから、早18年が過ぎようとしております。また、本大会長である根本先生とは、国際医療センターの開院前から様々な場面で指導をいただき、本大会のテーマである、まさに「守・破・離」の多くの日々を過ごしたことが思いだされます。

28歳で救急看護の現場に自ら望み、悩みながら医学書、看護雑誌、外部セミナー、学術集会に「守」の基盤を求め、臨床の場面で繰り返し鍛錬したこと。

さらなる進化を目指した2006年は、「救急看護認定看護師」へ進む「破」の時期となり、時に苦悩が覆いかぶさり、これまでの自身の価値観や方法を打破するのに本当に悩みながら、それでも多くの人々に支えられて、ひたすらに、そしてひたむきに「破」になるべく邁進を貫いたこと。

そして、新しい価値観や創造性を求めて、数年間、他の分野に自ら身をおき、再び初療室勤務に戻った現在は、「救急看護」とは何か、「救急看護」に必要なものは何か、という「離」のステージに入ったことを実感しております。

学術集会では諸先輩方と、同世代と、そして次世代と、ひとりひとりの「守・破・離 」を共有しながら、有意義な救急看護を語る場でありたいと思います。

根本先生から伝えられた、2006年、「 求められることも大事だが、自分に何ができるか考えよ」というメッセージを忘れずに、救急看護に携わる看護師たちが本学術集会を通じて患者とその家族に真の意味で支えられる存在になるべく良い機会となることを願っています 。

謹白

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